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知っておきたい抗菌薬の適正使用

慶應義塾大学病院 薬剤部
石川 春樹
 読者のみなさんの中には風邪をひいて医療機関にかかり抗菌薬を処方された経験がある方もいることでしょう。もしかしたら、自ら抗菌薬処方を希望した覚えのある方もいるかもしれません。しかしながら、これまでの風邪に対する抗菌薬処方の多くは適切ではないとして、厚生労働省から通達が出されていることをご存知でしょうか。一般向けのわかりやすい資材(http://amr.ncgm.go.jp/pdf/lr-l4.pdf)も作成されていますので、是非ご覧いただきたいと思います。
 みなさんが風邪と認識している急性気道感染症の約90%はウイルス感染症によるものです。抗菌薬はその名が示す通り「細菌」に対し効果を発揮する薬剤であり、ウイルスには効果がありません(細菌とウイルスはまったく異なる微生物です!)。医師は患者状態を入念に診察したうえで抗菌薬処方の要否を判断していますので、患者側から抗菌薬処方を希望するのは薬剤師の視点からも推奨できるものではありません。その理由は幾つもありますが、ここではみなさんもデメリットとして考えやすい理由を2つほど挙げておきます。
 1つ目の理由として、抗菌薬は病原菌だけでなく通常人体に悪影響を及ぼさない、もしくは有益とされる常在菌にも抗菌作用を発揮します。その結果、腸内フローラなどに悪影響を及ぼし、かえって体調を崩しやすくなることがあります。2つ目として、抗菌薬に限ったことではありませんが、薬には副作用がつきものであることが挙げられます。数多ある薬剤の中で抗菌薬は副作用発現頻度が高い薬剤とされています。アナフィラキシーショックをはじめ、皮疹や発熱、肝障害、腎障害などには我々医療従事者は臨床現場で常に細心の注意を払っています。このようなデメリットをときに伴うことを記憶に留めておき、医師・薬剤師の指示通りに服用するよう心がけてください。
 また、抗菌薬の不適切使用は薬剤耐性菌の発現を助長することに繋がります。国策に視点を向けてみると、2020年までに特定の経口抗菌薬使用量を2013年比で50%に減らすなど具体的目標を掲げております(薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン)。1980年代以降、新規抗菌薬の開発が減少する一方で、新たな薬剤耐性菌の発現報告が増加しています。ひと昔前はより強力な抗菌薬を開発することに主眼が置かれていましたが、近年では今ある抗菌薬を適正使用することで薬剤耐性菌の発現を可能な限り抑制しようとする考え方へシフトしています。感染症治療に有効な抗菌薬が存在しない事態に陥らないようにすることは人類存続のための重要な課題であり、それは今まさに直面している問題なのです。
 ここまで抗菌薬の適正使用について挙げてきましたが、抗菌薬使用を減らすことだけが全てではなく、必要量を必要期間、不足なく抗菌薬治療を行うことも適正使用です。読者のみなさんがすぐにでも実施できることとして、①医師の診断を信頼して、無闇に抗菌薬の処方希望を行わない、②処方された抗菌薬は医師・薬剤師の指示通り正確に飲みきる、③処方された抗菌薬を他人へ譲渡しない、以上のことを心がけて下さい。みなさんの意識の向上が大きな課題解決への一助になります。
 最後になりますが、抗菌薬を必要とする場面を極力減らせるように健康管理に気をつけて充実した日々をお過ごし下さい。
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