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関節の痛みが続くときには・・・

産業医科大学 第1内科学講座
講師 中野 和久
朝起きたときや長時間同じ体勢でいたときなど、手指がこわばったり、肩や肘・膝などの動きが悪くなったり、関節に痛みを感じることはないでしょうか?こういった症状が続く場合、関節に炎症(関節炎)が起きている可能性があります。その代表的な原因疾患が変形性関節症と関節リウマチです。日本では「平均寿命」が80歳後半まで延びていますが、健康で自立した生活を送ることができる期間「健康寿命」こそが重要です。こういったいわゆる運動器の疾患を放置すると、歩く、座る、立ち上がるといった日常動作に支障が出始め、生活にも制限がかかり、介護が必要となるリスクも高まります。

変形性関節症

関節にある軟骨がすり減って変形したり、骨と骨がこすれたりすることで炎症が起こる病気です。特に膝に起こる「変形性膝関節症」は国内で2530万人と推計されます。手指の第1関節(遠位)などにも病変が生じ、痛みなどの症状を伴います。加齢や外傷、肥満、性別、遺伝子、関節への大きな負荷など様々な要因が考えられます。根本的な治療薬はなく、鎮痛薬で痛みを軽減したり、関節の潤滑液として機能するヒアルロン酸などを関節内に注入して関節を保護したり、といった対症療法が中心になります。コンドロイチンやグルコサミンなどのサプリメントは、これまでの臨床データの解析結果からは「治療効果はほとんど期待できない」とされています。

関節リウマチ

免疫の異常により、本来は関節に保護的に働く組織である「滑膜」に持続的な炎症が起こり、骨を食べる細胞や軟骨を溶かす酵素が組織内で増えていくことで骨や軟骨が壊れていく病気です。免疫の異常は全身に波及しうるため、熱っぽい、体がだるい、朝は特にこわばる等の症状も多く、肺や目など様々な臓器で炎症を起こすことがあります。まともな治療がない時代は、寿命が10年縮まると言われていました。国内では約70〜100万人の患者さんがいると言われます。30〜50歳代で発症のピークがあり、男女比は1:4程度であることから、家庭を支える主婦層に多いことになりますし、隠れた社会的な損失が大きな病気とも言えます。原因としては、遺伝的なリスクに加えて、喫煙、歯周病菌、ある種の腸内細菌などの関与が知られるようになってきました。従来はリウマチと診断されると絶望的な印象さえ抱く方が多かったと思いますが、ここ20年で治療法が大きく進歩しました。こういう状態を保てば骨や軟骨が破壊されないという状態を意味する「寛解」状態を目指し、メトトレキサートという内服薬を中心として治療を開始し、3ヶ月程度で反応が良くなければ次の段階として標的型の抗リウマチ薬と分類される注射や内服薬を選択することになります。このような治療戦略で治療を行ったのち、お薬も不要になるくらいにコントロールできる患者さんも見られるようになってきました。
この2つの病気の他にもいくつか関節炎をきたす病気があります。その中にはリウマチのように免疫異常に端を発したものも隠れています。そういった病気は発症から治療までが早い程、薬の効き目も良いので、関節の痛みや腫れが続く場合はためらわずにリウマチ内科の受診をお勧めします。運動器を守って「健康寿命」を延ばしましょう。
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