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健康メモ
C型ウイルス性肝炎の治療が大きく進展
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C型ウイルス性肝炎の治療が大きく進展

福岡大学病院 薬剤部 部長 二神 幸次郎

皆さんが薬害肝炎ときかれると、ライシャワー事件を思い出される人もいるのではないでしょうか。この事件は東京オリンピック開催や新幹線開通と日本が先進国として仲間入りできることに自信を持ちかけた矢先の1964年の出来事でした。駐日ライシャワー大使は暴漢に襲われナイフで刺されましたが、手術で一命は取り留めたものの、売血由来の血液が輸血され大使はその後肝炎を発症し、肝臓がんへと進展し1990年に死亡されました。このようにC型肝炎ウイルス(以下、HCV)感染はそれ自体怖くありませんが、その後の原発性肝臓がんへの進行が非常に恐れられています(図1)。HCVに感染すると、肝炎、肝線維化、肝硬変症を経て肝細胞がんに進みます。肝細胞がんはHCVの蛋白分子が肝臓の細胞機能に障害を与えてがん化するものと考えられています。


肝細胞がんを減少させるには、慢性C型肝炎といわれる時期にウイルスを殺すことが有効な方法と考えられます。そのHCVを遺伝子型でわけると日本人にはジェノタイプの1b型が約70%で、2a型が約20%、2b型が約10%です。現在、新たな感染はほとんどありませんので感染者数は減少していますが、HCV感染者は約220万人と推計されています。感染者の多くは40歳以上で、ピークが60〜79歳(図2)で、医療施設で治療を受けているのは50万人ほどで残りは自分がHCVに感染していることさえ知らない可能性があります。


最近の治療では、インターフェロンと抗ウイルス薬のリバビリンの2剤を併用しています。この治療はウイルスの排除、線維化がん化の予防に飛躍的な効果をもたらしました。しかし、HCVの中で、日本人に多い1型は2型より発がんの危険性が3.9倍高いといわれ、さらに1b型のウイルス量が多い高ウイルス量の患者では、2剤併用でも約半数にHCV排除が得られずウイルス感染が持続しているという問題がありました。今度、平成23年11月にウイルスの増殖を抑制すると共に自然免疫系を活性化するといわれているプロテアーゼ阻害薬テラプレビル(商品名 テラビック)が発売されました。従来のインターフェロンとリバビリンに加え、テラプレビルの3剤を併用します。治療効果は持続的なウイルスが消えたかどうかで評価されますが、3剤併用では治療期間が48週間から24週間に短くなった上にHCV1型高ウイルス量患者に対する著効率が2剤併用による52%から3剤併用によって73%に大きく上昇しました。さらに前治療後再燃した患者さんでは88%と高い著効率が、また前治療に無効だった患者さんにも34%に著効が認められました。このテラプレビルの発売で今後HCV肝炎治療が大きく進展するものと期待されています。 ただ、治療にあたっては、3剤併用療法は効果が高い反面、うつ病、貧血や白血球減少、血小板減少などの血液障害、食欲不振、悪心・嘔吐などの消化器障害など注意すべき副作用に加え、重篤な皮膚障害が報告されています。治療では腎機能を定期的に確認し、皮膚障害では皮膚科専門医との連携が必要です。

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