ホーム
健康メモ
特定健診結果をいかに活かすか
健康メモ

特定健診結果をいかに活かすか

健康保険八代総合病院 糖尿病センター 部長 関上 泰二

日本人の死因で最も多いのは、いわゆる癌です。みなさんも健診と言えば、癌の早期発見のために行っているという方も多いのではないでしょうか。では、死因の2番目、3番目は何かと言うと、心疾患、脳血管障害と続きます。これらの多くは動脈硬化性疾患であり、言わば、糖尿病、高血圧、脂質異常症がもとに生じてくる疾患です。心疾患と脳血管障害による死亡を合わせると、癌による死亡とほぼ同数です。にも関わらず、健診結果で、「あなたは糖尿病の疑いがあります」とか「コレステロールが高いです」などと書かれてあっても、全く気にしない方もいるのではないでしょうか。それは、多少血糖値、血圧あるいはコレステロールが高くても、死ぬことはないだろうと考え、痛くもないし痒くもないというふうに自覚症状がないことが原因だと考えます。しかし、もしあなたに早期がんができていたとして、症状があるでしょうか。当然ありません。しかしながら、あなたはきっと病院に検査を受けにいくでしょう。

特定健康診査、通称「特定健診」とは、2006年の健康保険法の改正によって、2008年4月より40〜74歳の保険加入者を対象として、全国の市町村で導入された新しい健康診断のことです。以下のようなステップにて支援を受けていただく方をスクリーニングいたします。

ステップ1 腹囲とBMI内臓脂肪蓄積のリスクを判定

  • 腹囲:男性は85cm以上、女性は90cm以上 →(1)
  • 腹囲:男性は85cm未満、女性は90cm未満、かつBMIが25以上 →(2)

ステップ2

  • 1.血糖・・・空腹時血糖が100mg/dl以上またはHbA1cが5.2%以上または薬物治療中
  • 2.脂質・・・中性脂肪が150mg/dl以上またはHDLが40mg/dl未満または薬物治療中
  • 3.血圧・・・収縮期の値が130mmHg以上または拡張期の値が85mmHg以上または薬物治療中
  • 4.喫煙歴あり

ステップ3 ステップ1、2から対象者をグループ分け

  • (1)の場合:1〜4のうち、2つ以上該当で「積極的支援」、1つは「動機づけ支援」を行う。
  • (2)の場合:1〜4のうち3つ以上該当で「積極的支援」、1〜2つは「動機づけ支援」を行う。

ステップ4 65歳以上75歳未満の前期高齢者は、積極的支援の対象となった場合でも動機づけ支援とする

もちろん、「支援」が必要と判断された方は、医療機関に2次精査にて樹脂印していただいても結構です。大切なことは、きちんと特定健診を受けて、現在のリスクを把握することだと思います。次に、実際筆者がどのように健診後の患者さんを診察しているかについてお話ししたいと思います。

特定健診の目的は、大きく2つあると筆者は考えております。それは、ひとつは、今や40歳以上の3人に1人と言われる糖尿病患者数を減らす事、もうひとつは、心筋梗塞に代表されるような大血管障害による死亡率を減らす事です。

糖尿病、脳卒中、心筋梗塞、脂質異常症などに代表される生活習慣病の患者は年々増加し、現在では国民医療費のおよそ30%を占めるにいたっています。ですから、国としては、特定健診をうけさせ、糖尿病予備軍や軽症な生活習慣病患者をスクリーニングし、より早期から食事・運動指導を行い生活習慣の是正を促す、いわゆる「積極的あるいは動機づけ支援」を行い、その結果、症状や病態の悪化を防ぎ、心筋梗塞や脳卒中を予防する事で国民の健康維持と医療費軽減を図っていると解釈しております。

しかし、「支援」が極めて重要であることには異論はありませんが、患者の病態を正確に把握するためには、現時点での動脈硬化の程度を評価しておくこともまた重要であると筆者は考えております。ですから筆者は以下のように診療しております。

まず、糖尿病関連については、空腹時血糖値で100mg/dl以上126mg/dl未満、HbA1cs5.2%以上6.5%未満であれば、ブドウ糖負荷試験を受けていただいております。かくれ糖尿病を発見でしたり、同時にインスリン値を測定する事で、将来的に糖尿病になりやすいかどうかも予想できます。また、糖負荷後2時間値が糖尿病型でなくて境界型であっても、心筋梗塞のリスクは正常な人と比べ有意に高い事がわかっておりますので、その後に頸動脈エコーなどを行い、現在の動脈硬化の程度を評価致します。脂質以上関連については、一般的に悪玉と言われるLDLコレステロールこそが、実は最も動脈硬化と関連深い検査項目であり、これが異常値であれば、頸動脈エコーを行っております。頸動脈の狭窄率が高度であれば投薬を開始するのはもちろんの事、マルチスライスCTなどを用い、冠動脈(心臓に酸素を供給する動脈)の状態把握まで行っております。その他、脂質関連項目として、HDL(善玉)コレステロールが低値であったり中性脂肪が高値であったりすれば、同様に動脈硬化評価を行います。血圧が高ければ、心臓超音波検査を施行し、心臓の動きや壁の厚さなどを評価することで治療薬を検討致します。

もちろん、食事療法や運動療法の指導は基本でありますので、2度3度となく管理栄養士らの協力を得て療養指導を行っております。どうですか、みなさん。

今述べたような検査を受けた事がありますか。それぞれ一つ一つをとってみると大した異常値でもないと思いつつも、集まれば確実に動脈硬化性疾患の発症リスクを増やしますから、健診結果が届きましたら、この程度かと高をくくらずに必ず2次精査を受けて頂きますようにお願い申し上げます。

ページTOPへ