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健康メモ
慢性骨髄性白血病−21世紀になって大きく変わった病気−
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慢性骨髄性白血病−21世紀になって大きく変わった病気−

NTT東日本関東病院 血液内科部長 臼杵 憲祐

白血病は血液の癌です。白血病というと、女優の夏目雅子さんやミリオンセラー小説の「世界の中心で、愛を叫ぶ」のヒロインの病気として知られています。これらの白血病は急性白血病と呼ばれ、治療をしないと短期間で命を落とす危険のある、急激に進行するタイプの白血病です。

それとは異なり、ゆっくりと経過する慢性骨髄性白血病という病気があります。昭和50〜60年代に蔵間という相撲の人気力士がいました。蔵間は関脇にまでなりましたが、平成元年の9月場所限りで現役を引退し、その後テレビなどでタレントとして活動していました。実は、平成元年の健康診断で慢性骨髄性白血病であることがわかり、そのために相撲の現役を引退したそうです。慢性骨髄性白血病は、ゆっくりと経過しますが、その後に急性白血病と同じ病像に変化します。これを急性転化と呼びます。当時の治療はインターフェロンと骨髄移植でした。骨髄移植では病気は治るのですが、3〜4割の人が命を落とすという治療であり、インターフェロン治療では平均4〜6年で急性転化となりました。蔵間は、現役引退の原因がこの病気であることも、そして年寄廃業の理由が自分には弟子を一人前に育てるだけの時間が残されていなかったからだということも、一切明かさなかったそうです。そして、診断からちょうど6年経った平成7年(1995年)に急性転化となり、骨髄移植の準備がされていたのですが、42歳の若さで亡くなりました。それから6年経った2001年にこの病気の特効薬が発売になりました。

その特効薬はイマチニブという名前です。この薬は簡単にできたわけではありません。そもそも慢性骨髄性白血病は、一八四五年に初めて一つの病気として報告されました。1960年に慢性骨髄性白血病の細胞に異常な染色体があることがフィラデルフィアで発見されて、フィラデルフィア染色体と名付けられ、1973年にフィラデルフィア染色体は、9番目と22番目の染色体の一部が入れ替わって出来たものであることがわかりました。1982〜85年に、染色体の一部が入れ替わることによって遺伝子が融合して異常なBCR-ABL融合タンパク質ができており、これが慢性骨随性白血病の原因であることが明らかにされました。1987年にBCR-ABL融合タンパク質の機能を抑える阻害薬の開発が始まり、1993年に実験室レベルでBCR-ABL阻害化合物のうちイマチニブが有効であることがわかり、1998年にイマチニブのヒトでの試験が開始され、2001年に発売になりました。そして、この薬によって慢性骨髄性白血病の五年生存率は約90%にまで改善されました。今では骨髄移植を行なうことは滅多にありません。

参考文献:
「蔵間竜也」、ウィキペディア (Wikipedia): フリー百科事典、http://ja.wikipedia.org/
Druker BJ. Translation of the Philadelphia chromosome into therapy for CML. Blood 2008 112: 4808-4817.

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