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健康メモ
最近見にくくなってきた・・・
健康メモ

最近見にくくなってきた・・・

NTT東日本東北病院 眼科医長  志村 雅彦

目に関する高齢者の訴えで、眼科医を悩ませる症状の一つに「ものがはっきり見えなくなってきた」があります。

このような症状で眼科医にかかり、「大丈夫ですよ」と言われ、点眼薬を処方されたものの改善していない・・・という経験はありませんでしょうか?
今回は、このような症状についてお話したいと思います。

「ものがはっきり見えない」という訴えに対し、我々眼科医はまず視力を測ります。この時眼鏡(レンズ)を入れて測る視力を矯正視力といい、この矯正視力が悪い場合は何かしら目に異常があるということになります。これには目の中の水晶体が濁ってくる白内障をはじめ、網膜・視神経の病気も疑わなければなりません。白内障であれば、“昼間特にまぶしい”という症状から始まり、“薄暗いところでよりぼやける”あるいは“霧がかかったように見える”という症状に至るのですが、緑内障の急性発作や角膜炎などでも同様の症状が見られることもあり、詳しい検査が必要になってきます。また、網膜疾患としては、中心がゆがんで見える中心性漿液性網脈絡膜症(中心性網膜炎)、視野の一部がゆがむ網膜静脈閉塞症、中心部が見えない黄斑円孔などのほか、症状の定まらない糖尿病網膜症、高血圧網膜症などがあります。いずれも症状によって内服や点眼、時には手術などが必要になってきます。一方、視神経疾患では脳梗塞による視野障害などもあり、目の病気と思っていたら脳の病気だったなどということもあります。いずれにしても眼科医は決して「大丈夫ですよ」とは言わないでしょうし、原因がはっきりしているので我々眼科医も皆さんも納得がいくことになります。

さて、問題なのは前述した矯正視力が良い場合です。

そもそも「見える」というのは、「見たいものにピントがしっかり合う」ということです。人間の目の中にはピントを合わせるための筋肉があり、その力で遠い方から近くの方までうまくピントを合わせているのです。この筋肉を働かせない状態を調節ゼロの状態と呼び、この場合、最も遠い地点にピントが合います。ですから筋肉を働かせれば働かせるほど近くにピントが合っていくのです。しかしながらこの筋肉は加齢に伴って力がなくなっていき、五十歳前後で力が全く無くなってしまいます。つまりだんだん近くにピントが合わなくなっていく・・・そうです! 老眼なのです。もともと乱視などで遠くさえ見にくかった方にとってそのストレスは倍増でしょう。我々眼科医からすれば眼鏡をつける事で「見える」ため、目の病気とは認識されず、「大丈夫ですよ」ということになりますが、患者さんからすれば以前ははっきり見えていたものが眼鏡を使わないと見えないという状態になるため、納得が出来ないということになります。

さて、老眼への治療法は・・・残念ながらありません。ですが、近くにピントが合わないのであれば近くにピントを移動させるための眼鏡、つまり老眼鏡をつけることである程度改善はされます。もちろん遠くを見るときには眼鏡を外す、あるいは別の眼鏡をかけて頂くことになります。このように、状況によって眼鏡を交換する必要が生じるため、無理がかかって眼精疲労が引き起こされやすくなりますから、目を閉じて休む時間をとったり、眼精疲労に対する点眼薬を使用したりする必要があります。

実際にはこのような老眼に加え、非常に軽度の白内障や自律神経の異常による涙液分泌の異常などが重なって症状が形成されることが多く、複数の点眼薬の処方にもかかわらず症状が改善しないということもよく見られます。

いずれにせよ自分がどのような状態であるのかを眼科主治医と納得いくまで話し合うことが大事なのです。

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