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健康メモ
高齢者にみられる代表的な二つの脳の病気 〜アルツハイマー病とパーキンソン病〜
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高齢者にみられる代表的な二つの脳の病気 〜アルツハイマー病とパーキンソン病〜

財団法人広南会広南病院 神経内科部長 野村 宏

この二つのカタカナ名の病気は、それぞれ最初の発見者の名前を付して命名されていますが、アルツハイマー病が、主として知的機能が障害される病気であるのに対し、パーキンソン病の方は主として運動機能が障害される病気であり、対照的です。

アルツハイマー病気は、代表的な老人性痴呆ですが、かつては、我が国の痴呆全体に占める割合は、脳の動脈硬化や脳梗塞、脳出血などの脳卒中と関連してみられる血管性痴呆の方が高いとされていました。しかし、近年は、欧米並みに、アルツハイマー病の方が多くなり、急速に超高齢化社会を迎えつつある我が国でもありふれた病気になっています。アルツハイマー病の脳にはアミロイドベータ蛋白という特殊な蛋白がたくさん蓄積し、無数の老人班(脳にできるシミのようなもの)と神経原線維変化(神経細胞に貯まるゴミのようなもの)が形成されて神経細胞が障害されます。通常こうした変化は、記憶に重要な役割を果たしている海馬と呼ばれる側頭葉の内側部から始まるため、徐々に物忘れが目立つようになります。アルツハイマー病のもの忘れは、日々の出来事から忘れやすくなり(エピソード記憶の障害)、言ったり、見聞きしたことが、少し間を置くとすっかり忘れ去ってしまい(遅延再生の障害)、新しいことが憶えられない(記名力の障害)といった特徴があります。最近は、アルツハイマー病の脳内で減っているアセチルコリンという物質の働きを高めることで、痴呆の症状の現れ方を少しでも穏やかにし、遅らせることが期待される塩酸ドネペジルという治療薬が用いられるようになっています。また、現時点では、もの忘れのみにとどまり、日常生活は普通に送れるものの、将来アルツハイマー病に移行する危険性が高いと言われている軽度認知障害(MCI)が注目されています。「もの忘れ外来」を開設している医療機関も増えていますので、お気軽にご相談されてみてください。

パーキンソン病は、最初、手や足のふるえ(振戦)で気付かれることが多いのですが、日々の身のこなしが全般にゆっくりになったり(無動)、前かがみで足運びが小さい歩き格好(小股歩行)なったりしてきます。また、病気の進行と共に、転びやすさ(姿勢反射障害)が目立ってきます。診察すると、大抵は頸や手足の筋肉が多少なりとも硬くなっている(禁固縮)のがわかりますので、こうした諸々の特徴から、神経内科医にとっては、比較的診断は容易です。しかし、当初は、腰痛の自覚が強かったりして、整形外科などを受診されているケースもありますのでご留意ください。以前から、パーキンソン病の脳では、黒質という場所の神経細胞が減ってきて、ドパミンという神経伝達に関わる物質が不足していることがわかっていますので、それを補うように工夫された、様々な治療薬を適切に用いることで病状の改善がえられます。神経内科の領域では、最も治療薬が進歩している病気で、最近では、視床下核深部電気刺激術という脳外科的治療も開発されています。

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