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健康メモ
前立腺肥大症
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前立腺肥大症

元東京労災病院 泌尿器科部長 水尾 敏之

前立腺は精液の一部である前立腺液を作る臓器です。膀胱のすぐ下に接続し、その真中を尿道が貫いています。正常時の大きさは、栗の実大ですが腫大した場合に前立腺肥大症と言われます。前立腺肥大症は高齢者の男性によく見られるポピュラーな病気であり、尿道が圧迫されて排尿障害をもたらすことが知られています。

前立腺肥大症は年齢と深い関係にあり、40・50代で症状が出始め60歳を過ぎると、半数以上の人が夜間頻尿と放尿力低下を訴え、 65歳前後で治療を開始する人が最も多くなります。そして、80歳までには80%の人が前立腺肥大症になるとみられています。したがって50歳を過ぎたら前立腺検診を受けることをお勧めします。

前立腺肥大症の症状は、

  1. 尿の勢いが弱い
  2. おなかに力を入れないと排尿できない
  3. 夜中、何度もトイレに起きる
  4. トイレに立ってからおしっこが出るまでに時間がかかり、排尿時間が長い
  5. 排尿後、残尿感がある

などです。

前立腺の症状はその程度により第T期から第V期に分類されます。

第T病期(膀胱刺激期)

夜間にトイレに行く回数が多くなる、尿の勢いがない、尿がすぐ出ない、少ししか出ない、時間がかかる(排尿障害)などの症状が出てきます。

第U病期(残尿発生期)

尿をした後もすっきりとせず残っているような感じがする(残尿感)といった症状が出てきます。

第V病期(慢性尿閉期)

昼夜を問わずトイレに行く回数が増えて、排尿にかかる時間が長くなり、一回の排尿に数分かかるようになります。時には尿が全く出なくなってしまうこともあります(尿閉)。

前立腺肥大症の検査と診断

(問診)

自覚症状としての排尿障害の程度や、他の疾患との鑑別をするために既往歴などを詳しく聞きます。

(尿流量測定)

他覚所見として排尿障害の程度を数値化して表します。

(直腸診)

前立腺の大きさ、硬さ、表面の状態(なめらかさ・凹凸)がわかります。

(超音波診断)

前立腺の腹側の状態、残尿のおおよその量も推定できます。

(腫瘍マーカーの測定)

腫瘍マーカー検査(PSAなど)は前立腺がんとの鑑別のために行ないます。

立腺肥大症の治療法

【薬物療法】現在行われている薬物療法は、

  1. 機能的閉塞に対するα1-ブロッカー
  2. 機械的閉塞に対する抗アンドロゲン剤
  3. 不安定膀胱に伴う刺激症状(頻尿、尿意切迫、切迫性尿失禁)に対する生薬・漢方薬 があります。第一選択薬としてα1-ブロッカーを使用し、機能的閉塞を解除することから行われます。

「主な治療薬」

α1-ブロッカー:排尿時は膀胱頸部の開大を助け、尿勢を増し、蓄尿時は膀胱の過活動を抑制し、日中および夜間の頻尿を軽減させます。めまい・ふらつき・立ちくらみなどの低血圧に伴う症状が生じる場合があります。

抗アンドロゲン剤:前立腺を縮小させ、腺腫による直接的な機械的閉塞を改善させます。肝機能障害、性機能障害や女性化乳房などの副作用が起こり得ます。

生薬・漢方薬:排尿困難、頻尿、尿意切迫、残尿感など複雑な自覚症状を改善させるといわれています。軽度の消化器症状を認める程度の副作用が有ります。

【手術的治療】
手術に踏み切る一定した基準はありません。病期でいえば第U病期以降で、薬物療法で思うように症状が改善しない場合や、残尿が100mL以上あり、尿閉を繰り返すような場合に手術を考えます。

「主な手術法」

  1. 経尿道的前立腺切除術(TURP):先端に電気メスを装着した内視鏡を尿道から挿入し、患部をみながら肥大した前立腺を尿道内から削り取ります。体内に入った灌流液が電解質のバランスを崩し、吐き気や血圧の低下などを起こすTURP反応と呼ばれる副作用が起こることがあります。
  2. レーザー治療:尿道に内視鏡を挿入し、内視鏡からレーザー光線を照射します。そして肥大結節を焼いて壊死を起こさせ、縮小させます。組織を焼いてしまうのでガンの有無を調べられず、組織が壊死し脱落が起こるまで、症状の改善は見られません。
  3. 温熱療法:尿道や直腸からカテーテルを入れ、RF波やマイクロ波を前立腺に当てて加熱し、肥大を小さくして尿道を開かせます。根治的な治療ではないので、半年から一年で症状はもとに戻ってしまいます。
  4. 尿道バルーン拡張法尿道ステント挿入法:肥大結節によって狭くなった前立腺部の尿道を、物理的な力によって押し広げたり、管を挿入して尿道を確保する方法で、救急的な意味合いの強い対処療法です。あくまで手術ができない患者さんのための処置です。

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