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健康メモ
貧血 〜高齢者の貧血を中心に〜
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貧血 〜高齢者の貧血を中心に〜

NTT東日本関東病院 血液内科部長 浦部 晶夫

貧血は血液中の中の赤血球数あるいはヘモグロビン濃度が低下した状態を指しています。血が薄い状態と言うこともできます。ヘモグロビンは赤血球の中に含まれている赤い色をした色素で酸素を結合して運搬する働きがあります。貧血になると酸素の供給が十分にできなくなるので、めまい、息切れ、疲れやすいなどの症状が出ます。脳への酸素供給も不足しますので頭痛が出やすくなります。

赤血球、白血球、血小板などの血液細胞(血球)は骨髄で造られます。貧血は骨髄での赤血球の産生から血液中での赤血球の寿命を含む過程に異常があると出現します。

貧血の原因を大別すると、材料不足、産生障害、崩壊亢進、出血に分けることができます。材料不足は、赤血球をつくる上で必要な物質の欠乏によるもので、鉄、ビタミンB12、葉酸などの欠乏によるものです。鉄分の欠乏は貧血の中でも最も多いものです。産生障害は、骨髄における赤血球産生に障害が起きている場合で、再生不良性貧血では骨髄の中で血液をつくる細胞が極端に少なくなっていますし、骨髄異形成症候群では血液細胞が次第に成熟していく過程がうまくゆきません。血液以外の病気のために骨髄での血液の産生が抑制される場合もあります。崩壊亢進というのは、赤血球は通常は120日の寿命があるのですが、何らかの理由で正常の寿命に達する以前に壊れてしまうもので溶血と呼ばれています。

貧血はこのように種々の原因で出現するのですが、高齢者に多いという特徴をもつものもあります。高齢者に多いものとしては、骨髄異形成症候群と悪性貧血、他の疾患に続発する二次性貧血などを挙げることができます。

骨髄異形成症候群は、骨髄には造血細胞があるにもかかわらず血液細胞の成熟過程に障害が発生し、血球の産生がうまくゆかないものです。このような状態を無効造血と呼んでいます。骨髄異形成症候群では、貧血ばかりでなく、白血球減少、血小板減少なども出現します。血球の形態に異常がみられることもあります。骨髄異形成症候群は白血病に移行することがあり前白血病状態という側面を持っています。骨髄異形成症候群は、症状があまり変化しないタイプから白血病に移行しやすいタイプまで、いくつかの病型に分かれています。高齢者に多いという特徴があり、最近診断されることが多くなってきた病気です。

悪性貧血はビタミンB12の吸収がうまくできないために出現する貧血の代表的なものです。食事に含まれているビタミンB12は小腸で吸収されるのですが、胃から分泌される内因子という物質がないと吸収されないという特徴があります。胃の粘膜が萎縮して内因子が分泌されなくなり、そのためにビタミンB12が吸収されなくなるのが悪性貧血です。悪性貧血では、貧血のほかに、舌がつるつるになって痛みが出たり、足のしびれが出たり、白髪が増えたりします。悪性貧血という名前がついていますが、診断がつけばビタミンB12を筋肉注射することによってすぐに良くなります。

他の疾患があるために出現する貧血を二次性貧血といいます。腎臓が悪くなって腎不全と呼ばれる状態になると貧血(腎性貧血)が出現します。糖尿病が悪化すると腎不全になって腎性貧血が出現します。腎性貧血にはエリスロポエチンという造血因子の注射が有効です。癌があると貧血が出現しやすく、特に消化器癌では出血によって貧血がしばしば出現します。出血が持続すると鉄欠乏になり鉄欠乏性貧血になります。高齢者で鉄欠乏性貧血があったら、胃癌、大腸癌などがないかどうか検索する必要があります。胃の手術をした場合にも鉄の吸収が悪くなります。胃を全部切除した場合には内因子が出なくなりますのでビタミンB12吸収障害が出現します。

貧血の有無は血液検査ですぐにわかります。定期的な健康のチェックをお勧めします。

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